あんたに見えろ、オレ。
『白い憂鬱』
***
『あんたにオレって見えてる?』
アイツが休んで丸二週間。
休む前日、オレにポツリと言った言葉だった。
もちろんヤツが幽霊だのなんだのの類なわけではない。
だから「オレ実は死んでるんだ」的な発言をされてもイマイチぴんとこないわけで。
つーか、アイツの言うことは正直前からハテナだった。
入学当時そうとう心細かったオレは前の席にいるアイツに話しかけられてうっかり舞い上がった。
少々おかしなヤツだとしても友達は宝。
その軽い思いが運のツキというか、なんというか。
そしていつからか少々どころじゃないことに気付いた。
授業中は必ず耳栓。
テストはぜんぶペンで記入。
自分の机に花瓶おいて花生けたり。
しまいにゃ将来の夢は殺人鬼だなんて言いやがった。
教室の連中もだんだん慣れてきて、今じゃアイツの馬鹿にも(よっぽどのことじゃなきゃ)驚かない。
だからあの日も「あ、そう」なんてテキトーに言い流して帰ったわけだが。
さすがにこうも休まれると心配を通り越して不気味だ。
しゅんかん、教室がざわっとなる。
前の席の机に、ドカッとカバンが置かれた。
「おはよ」
ヤツだった。
ホッとするような、悔しいような。
どうせならもっと休みゃよかったのにとか思うわけだけど。
「なにがオハヨーだ。今何時だと思ってんだよ」
はは、と笑いながらヤツはいつもみたくドカッと椅子に座ってこっちを向いた。
そしてしばらくオレをじぃーっと見た後、またニコッと笑い、一言。
「オレはもう二度と死なないから」
「・・・あ、そう」
オレは頬杖をついたまま、たっぷり間をおいてそう言い返した。
ヤツはニコニコしながら、それでもつまんないなぁ、とでも言うような顔をする。
なんとでもいえ、オレはもう愛想笑いすらしてやらん。
教室はまた動きを再開した。
そしていつもみたく、ヤツはベラベラとわけのわからないことをしゃべり始めた。
オレはぼんやりと頬杖をつきながら弁当をつつく。
『あんたにオレって見えてる?』
わざと目立つようなことしなくたって、
おまえのことなんて嫌ってくらいはっきり見える。
Yシヤツのすそからのぞく白い傷痕に気付きながら、オレはそっぽをむいた。